本条項は、契約当事者間で「代理関係」や「他の関係が」ないことを明示し、相手方の関係者からの不当な請求等を防止することを趣旨としています。
相手方と、ある取引について契約を結ぶと、相手方の取引の顧客等は、契約した両当事者を一個の当事者として考え、両当事者に責任追及をしてきたりすることがあります。
また、契約の一方の当事者において、権限無く他方当事者の名義や他方当事者の関係会社である表示を用い、その他方当事者を名宛人とする債務や契約を締結する事があります。
これにより多額の金銭債務を負ったり、金銭の支払い無く商品を納入しなければならない等の事態が生じる恐れがあります。
上記が「不当な請求」となります。
通常は考えられないようなことですが、不誠実な相手方もいますので、このような事態に陥らないように英文契約書の条項において適切に対処しておく必要があります。
また、中南米や、中近東の一部の国では、代理店保護法によって、代理店の保護を高度に図っています。
その場合に、契約の当事者は、販売店契約を締結したつもりでも、現地の裁判所では代理店契約であると判断され、契約解消に莫大な損害賠償を支払う必要が生じるという事態もあります。
そこで、本条項のように、当事者の関係を明確にすることで、責任の所在や、契約関係をはっきりしておくことが有用であるといえます。
代理関係のないことのほかに、「雇用関係のないこと」「合弁事業でないこと」といった趣旨のことも記載される場合もあります。
これは、雇用関係があると主張された場合、雇用主は被雇用者に対して福利厚生や賞与等を与えなければならなくなるからです。
また、販売店契約等の継続する契約関係では、外部の人間から見て合弁事業等に見える場合があり得ます。
そうなると、相手方と自社とが同一の法主体と捉えられ、相手方の債権者等から思わぬ責任追及を受ける恐れがあります。
そうならないためにも、「雇用関係のないこと」「合弁事業でないこと」についても英文契約書で記載することが肝要といえます。
The Distributor is not, and shall not hold itself out as the agent of the Supplier and under no circumstances shall the Distributor have authority to bind the Supplier nor hold itself out to any third party as having such authority.
ディストリビューターは,サプライヤーの代理人ではないし自己を サプライヤーの代理人であるかのように称しない。
また,いかなる状況 下においても,ディストリビューターは,サプライヤーを拘束する権限 を有するものではなく、また自己がかかる権限を有すると第三者に称し ないものとする。
In all activities hereunder, the Company and the Distributor shall act as independent contractors and nothing contained herein shall be construed to make either the Company or the Distributor the agent, representative, employee, joint venture or partner of the other party.
本契約に基づくすべての活動において、会社及び販売店は、独立した契約者として行動するものとし、本契約に含まれるいかなる規定も、会社又は販売店のいずれかを相手方当事者の代理人、代表者、被雇用者、合弁事業者若しくは、パートナーにすると解釈されないものとする。